剣道の練習や稽古にまつわるコラム

間合いの奥深さ

子どもの頃、仲間同士でよく腕相撲をして遊びました。
誰が一番強いのか、力自慢が挙って参加したものです。

 

たくさんの相手と勝負していると、ある時突然、相手の手を握るだけで相手の強さが判るようになった経験はないでしょうか。

 

柔道でも、組み合えば相手の強さが判ると聞いた事があります。

 

剣道も同様に、構え合うだけで相手の強さが判ってしまうのです。

 

腕相撲や柔道は手の平で相手のどこかを完全に捕まえるので、相手に触れていれば力強さが伝わっても不思議は無いでしょう。

 

剣道は、触れ合っていません。
触れたとしても、竹刀の先が触れ合う程度です。

 

なぜ判ってしまうのでしょうか。

 

これは全員が感じる感覚ではなく、日々の稽古の積み重ねによって身に付いた、
ある一定以上の実力者でないと感じれない感覚と言えます。

 

剣道では「間合い」という物が大変重要です。
言わばテリトリーといったところでしょうか。

 

この「間合い」を意識出来ていない者に、相手の強さなど感じる事は出来ません。
つまり危機管理能力が劣っているのです。

 

危険を察知出来ないまま、不用意に攻撃に出てしまう。
もし相手にその能力があれば、簡単に返り討ちにされてしまいます。

 

「間」を感じるという事は、竹刀の先から自分までの距離を半径とする円形の結界を張っている状態で、その中に入って来られると一気に緊張感が上がります。
ロックオンされてる状態と捉えていただくと解り易いでしょうか。

 

そう、その距離は一瞬で攻撃を加える事の出来る距離だからです。
その入られ方により、結界を押し込んで入って来ている攻めか、何も考えず不用意に入って来ただけなのか、その剣先にどれ程の気迫が込められているかによって、すぐに感じ取れるのです。

 

しっかり「間」を感じている相手のエリアに、不用意に入れば簡単にやられてしまうのは言うまでもありません。
ロックオンされに入っているようなものです。

 

では、どう攻めれば良いのでしょうか。

 

剣先に気迫を乗せて、自分の「間」で相手の「間」を押し込んで行くのです。

 

攻められた相手は自分の「間」を主張するために、剣先に気迫を込め相手の剣先を押しのけ、逆に相手の「間」を崩しにかかるのです。
このような剣先での攻防が、高段者の試合の特徴と言えます。

 

全日本選手権の試合を見ていると、身体はいつでも攻撃に移れる状態をキープしたまま、
剣先だけを小刻みに揺らしながら睨み合っている場面をよく見掛けるますが、
それはまさにこの攻防が繰り広げられているのです。

 

その剣先のせめぎ合いだけに集中していると、隙が出来、相手に飛び込まれてしまう事もあり、
剣先だけでなく自分の「間合い」全体に神経を張り巡らさなければなりません。

 

この駆け引きで構えを崩されてしまった方が負けなのです。

 

剣道にはかなりの御高齢の先生も多くいらっしゃいます。
スピードは若い選手には敵わないかもしれないが、この「間合い」の攻防でははるかに強いものです。

 

若い選手がスピードで勝負に出ても、「間合い」を崩せて無い以上入った瞬間に打たれて終わりなのです。
この攻防を感じ始めた頃、どんなに素振りをして鍛えた腕でも、高段者との対戦になると、構えているだけで腕がだるくなってしまいます。

 

この経験を積むことによって「間合い」での攻め方を身につける事が出来るのです。

 

改めて剣道の奥深さを感じてしまうところです。